申論題內容
(二) 加害者に対して損害賠償義務を課することによって、結果的に加害者に対する制裁ないしー 般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者が被った不利益を回復するために 加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的 副次的な効果にすぎず、加害者に対す る制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるという べきである。我が国においては、加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止する ことは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。そうしてみると、不法行為 の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一 般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行 為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。 (平成9年7月11日最高裁判所第二小法廷判決: 20分)