(二) 日本の刑事裁判は・被告人が有罪かどうかの判断をする段階と、有罪とした後、刑をどうするかの にわゆる量刑審理の段階とを区別していません・そのために、有罪、無罪を決めるためには考慮しては いけないはずの情報、例えば被告人の前科、あるいは被害者や被害者遺族の感情のような情報が、裁判 員による有罪、無罪の判断に影響を及ぼすおそれがあることが問題になっていました。それを避けるた めに、罪責の判断段階と量刑審理とを分けるのが、手続二分です。法制度としては、それは実現してい ません・しかし・杉田さんは裁判官としての実感から、それが大きな問題だと感じて、現行刑事訴訟公法 の枠でも可能な範囲で手続二分に近いことをしようと考えて、実践した方です。それが手続二分的審理 ・論文にも書かれています。その後、同志社大学法科大学院の教員に転じて、残念なか でこなられました・私は杉田さんのような創造性と実践力のある裁判官が日本でもっと多く出てきて くれたら、刑事裁判が活性化されるだろうと考えています。これは・制度が変わらなくても個人に意欲 と工夫があれば・かなりのことができる例の1つです。そうすると、個人にとっての課題は、大きな目、 標を自分の中で立てて、それに向けて自分に何ができるかを考えることです。それに向けて、とりあえ ず今日何ができるかを考えることではないでしょうか。そのために大事なのは、 まずは、組織の中に埋 没しないことです。これは実際、なかなか難しいです。組織と折り合いをつけなければ自分の力を発揮 する場所がなくなります。しかし、組織の中に埋没して自分を失っては、新しいことはできません。例 えば杉田さんの考え方は、裁判所内の通説ではありませんでした。それでも、自分の法廷では独自な試 みをするという決断ができるのは・組織に埋没していなかったからです。
(以下出處不用翻譯。摘錄自:後藤昭,法科大学院と刑事訴訟法学,一橋法学,13(2),頁8412014 年7月)