申論題內容
(二)事実関係等によれば,本件不正は、教育審議監その他の教員採用試験の事務に携わった 県教委の職員らが,現職の教員を含む者から依頼を受けて受験者の得点を操作するなど して行われたものであったところ,その態様は幹部職員が組織的に関与し,一部は賄賂 の授受を伴うなど悪質なものであり,その結果も本来合格していたはずの多数の受験者 が不合格となるなど極めて重大であったものである。そうすると,Aに対する本件返納 命令や本件不正に関与したその他の職員に対する退職手当の不支給は正当なものであ ったということができ,県が本件不正に関与した者に対して求償すべき金額から本件返 納額を当然に控除することはできない。また,教員の選考に試験の総合点以外の要素を 加味すべきであるとの考え方に対して県教委が確固とした方針を示してこなかったこ とや,本件返納命令に基づく返納の実現が必ずしも確実ではなかったこと等の原審が指 摘する事情があったとしても,このような抽象的な事情のみから直ちに,過失相殺又は 信義則により,県による求償権の行使が制限されるということはできない。したがって、 上記の事情があることをもって上記求償権のうち本件返納額に相当する部分を行使し ないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断には,判決に影響を 及ぼすこと とが明らかな法令の違反がある。 (平成29年9月15日第二小法廷判決)